実直なフレンチ シェフと厨房 真心デザート
第2話 二つのル ゴロワ


北海道に牧場レストランを開きたい。その夢の前に立ちはだかるいちばんの壁は、ル ゴロワに来てくださる東京のお客さまとお別れになってしまうということでした。 表参道の裏通りに小さなビストロを開いたのが1997年。お客さまにあたたかい応援をいただきながら、「予約のとれないビストロじゃだめだよ」と言っていただけるようになり、2006年にキラー通りに一つの空間で客席と厨房がぜんぶ見渡せる広い店を構えることができました。こんなオープンキッチンの店を持つことは、シェフと私の夢でした。


お客さまのお陰で夢が叶った。その感謝の気持ちは、忘れられるものではありません。だから、北海道に店を移すことは、捨てきれない夢ですが、東京から離れるわけにもいきません。


どうしたらいいだろうか……。
贅沢な矛盾、勝手なわがままなのか……。


あるとき、こんな私の悩みを聞いてくださったお客さまが、 「いいじゃない、夢は叶えなきゃ!」 と言ってくださいました。
そして、 「そのかわり、北海道に店を出しても、東京の店は無くしちゃだめだよ」とも。


そうか! 東京ル ゴロワと北海道ル ゴロワ。
ル ゴロワが二つあればいいんだ!


お店を二つやっていくなんて思ってもいませんでした。一つでもやっとこなのに。まして、東京と北海道なんて。でも、私にとっては、画期的なアイディアでした。


思えば、ル ゴロワは、シェフと私の店ではなく、大勢の皆さんに育てていただいた店です。お客さま、生産者のみなさん、お客さま、スタッフのみんな、そのほかたくさんの人の応援をいただいて今に至る店です。自分だけでなんとかしようというのがおこがましいんだ、とスイッチが切り替わりました。


具体的にどうするかはまだまだこれからですが、もやもやとした悩みは、すっきりと晴れました。思いがあれば、きっと叶う。
シェフも私も口べたでは誰にも負けませんが、思いを丁寧に伝えながら、応援してくださる皆さんに力になっていただき、二つのル ゴロワの実現にコツコツ取り組んでいきます。



第3話 私の夢・あこがれ・尊敬する北海道
第1話 北海道で馬車のケーキ屋さん


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photo by Muneaki Maeda
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